丸山の亡霊
「……なんで泣く」
「あまりにも、レンタルで……」
「確率が改善されてるなんて話が、嘘に思えてくるな……。だが、ここいらのDXガシャも昔は今より汚れている。辞表も、もう丸山の喉元まで迫っているらしい」
「すべて丸山のやったことだ。乱開発に、クライアント落としや産廃落とし。ガンオンが丸山から生まれた生き物なら、ガンオンが出すゴミ(カラースプレー)や毒(レンタル)も、丸山の産物ってことになる。このままガンオンに人間が棲めなくなっても、それはそれで、丸山がバランスをとった結果ということなんだろう。バンナムに慈悲なんてものはない。昔の人間は、そいつを知っていた。ほかならぬ、モバマスの産物の本能としてな」
「……だから、ガンオンから去り、ガンオンと関わりを絶って身を守った……」
「あぁ。だがそいつが複雑になりすぎて、いつの間にか人は、丸山を叩くために生きなきゃならなくなった。挙げ句、遊ぶことを難しくしちまって、その本末転倒から脱するために、EXVSへ新天地を求めた」
「そこでまた別の課金システムって奴ができあがった。ガンオンに棄てられた者、引退勢に希望を与え、生きる指針を示すための必然。それがナビ課金とコンパチ劣化機体課金だ。ガンオンから移った古いユーザーはそいつを否定した。バンナムが考案する糞システムとユーザーのニーズが相容れることはないからな。バンナムが消費者を屈服させようとするだけだ」
「……でも、バンナムっていう統一運営があって、ガンオンに三万人の人が住んでいる世界なんて、きっと今は夢物語ですよね。そういう可能性も、人にはあるんじゃないですか……?ガンオンユーザーの考え方が、いつかひとつになることだって――」
「みんなが平等に束ねられたわけじゃない。はじかれて潰された連中の怨念は、いまでもこのガンオンにへばりついている」
「哀しいことです、それは……」
「……ああ、哀しいな。哀しくなくするためにバンナムが在る筈なのに、なんでだろうな……」
「……うぅッ」
「……ん?」
「……またレンタルでした」
「バナージ――」
「わかってますよ。男が人前で泣くもんじゃないっていうんでしょう……」
「……いや。諭吉を想って流す涙は別だ。何があっても泣かないなんて奴を、俺は信用しない」
「……うぅぅッ…」
by Coffeeblack
| 2014-05-06 00:14
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